繰り返す野球肩・野球肘の治療とトレーニング

宇都宮市JR岡本駅から徒歩5分。
可動域向上・動作改善・強化による症状の根本改善を目指した施術とパーソナルトレーニングを提供している鍼灸接骨院トレスです。

今回のケースは野球肩や野球肘の診断を受けて投球制限(または禁止)を一定期間おこない復帰したものの、また同じ場所に痛みが出てきてしまったものの話。

思い起こせば、私自身も高校球児時代はこの繰り返しだったような気がします。

野球も昔と違って球数制限や分業制が一般的になって来ていますが、それでも痛めてしまう選手が少なくありません。

繰り返してしまっている場合には今までとは別なアプローチを考える必要性が出てきますが、初めて痛くなってしまった場合には最初のアプローチがその後の選手生命を左右しかねません。

私自身も苦しんだところですので、これからの選手たちには同じような思いはして欲しくないと常々思っています。

野球に限らず、とくにオーバーユーズで起こるスポーツ障害でお悩みの方が、どういう考えを持つべきか参考になればと思います。

復帰するまでの過程

おそらくスポーツ障害で治療院に来る方の多くは「痛みが治まれば復帰できる」と思っている方が少なくないのではないでしょうか?

ここは大きな間違いで、スポーツで復帰をする場合には「痛みなくプレーできること」以外に「競技中の負荷に耐えられるようになっているか」というところが重要です。

この「競技中の負荷に耐えられる」というのは、筋力的な回復はもちろん、繰り返しの動作をおこなっても大丈夫な機能的な動きを獲得できているかどうか、というところになります。

痛みが止まっても、筋力も回復していなければ耐え切れないのは想像に難しくないと思いますし、痛めた原因となる「悪い動かし方」が残っていれば、動かした時にまた同じところに負荷をかけ続けることになります。

ということで、復帰までの過程は治療する期間とリハビリ等でトレーニングをする期間が必要になります。

当院の治療方針で「可動域向上・動作改善・強化」を提唱している理由がここにあります。

治療期間

一般的に組織が損傷すると治るまでに一定の期間が必要になります。

例に挙げると、皮膚の損傷で1週間程度、軽い肉離れで2~3週、酷い肉離れで2ヵ月、靭帯の軽度損傷で2ヵ月、重度損傷で6ヵ月、と言われています。

この期間において、患部に対して当院では鍼治療、物理療法、マッサージなどの手技療法などをメインに行います。

また、最初の段階(初診時)で患部に負担をかけうる動作不良を確認しているので、そこに対するアプローチも行います。

動作不良に関して言えば、患部以外のところの問題が多いため、治療期間から積極的にアプローチしています。

例えば肩の痛みが股関節や胸椎に問題があった場合、この段階では肩のトレーニングはしないけど、股関節や胸椎のトレーニングはおこなう、といったところです。

トレーニング期間(リハビリ期間)

当院では先に述べたとおり、治療期間中に動作不良へのアプローチを進めていますので、痛みの軽減を待ってからリハビリを行うよりも総合的な治癒期間は短縮できているはずです。

とくに学生なんかで「今は投げられないけど、他にやることいっぱいあるからね」と私に言われている選手も少なくないですが、極端に言ってしまえば、怪我している時は「通常の練習よりやることが多い」と思っておくのが正解です。

症例によってやるべきことが違うため、ここで内容を詳細にあげることは難しいですが、順序としては動きの悪いところの動きは良くして(可動域向上)、動かし方の再構築をして(動作改善)、復帰しても負荷に耐えられる筋力に戻す(強化)、ということを念頭に計画を立てています。

「強化」に関しては、どうしても競技の中でトレーニングする部分も出てくるので全てを補えるわけではありませんが、最低限、「練習に復帰できるレベルまで戻すこと」を念頭に進めています。

復帰まで時間がかかる、または復帰しても再発しやすいケース

①治療期間後にすぐ復帰してしまう(リハビリをしていない)
②リハビリ期間が短かすぎる
③リハビリ中の負荷が高すぎる
④復帰までのビジョンがない(選手の目標設定がない)

ざっと挙げるとこんなところでしょうか。

①は一般的な治療院に通っている場合に陥りやすいパターンです。「痛みが治まれば復帰できる」と考えている人がそうなりやすいです。

当院にも「〇〇接骨院で治療を受けて一旦良くなったんだけどまた痛くなってきて」という理由で来院される方が多くいらっしゃいます。

こういった方は「治療だけしてもダメなんだ」と理解している方々なので良いのですが、それに気づかず痛くなるたびに同じ治療を延々と受けている方は残念ですが、結局のところ何も変わりません。

②と③は一緒に起こりやすいパターンで、早く復帰させたいがために負荷を高く設定してトレーニングしてしまうケース。

いきなりウエイトを持たせてトレーニングする場合には起こりうるパターンです。

基本的に動作不良は自分の身体を自由に操れていない場合に見られるものですので、自分の身体も自由に動かせないのに重りを持ってトレーニングしても効率の良いトレーニングにはなりません。

当院のトレーニングでは、もっと掘り下げて、いきなり立った状態でトレーニングはせずに、重力の負荷を極力なくした寝た状態のトレーニングからスタートします。そして、意外と寝た状態ですら上手に動かせない方も少なくありません。

④はどちらかと言えば学生が陥りやすいパターンでしょうか。

当院には「〇月に大事な大会があるので、それに間に合わせたい」と来院される方が多いのでほとんどこのパターンの子はいませんが、「親に連れられて来ました」といった受け身の子の場合には、トレーニングを処方しても自宅でやらないケースもありますので、本人の意識はかなり大切な部分なのではないかと思っています。

スポーツ障害を再発させないためのまとめ

・ケガをしたなら治療を受けただけではダメ(リハビリ・トレーニングまでちゃんとおこないましょう)

・ケガをしているからこそやるべきことがたくさんある(治療と一緒にケガをした理由を消さなければならない)

・復帰を焦るよりも目の前の問題をひとつずつ解決する(早く治そうと考えるのは本人ではなく治療家の方で良い)

・復帰までのビジョンを明確に持つ(もう同じ思いをしたくない、いつまでに復帰したい等)